【短編小説6】時を越えて消える歌・他歌自歌

 
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なんやらかんやら、
あーしてこーして、
僕はタイムスリップ
してしまった。

現代に帰れるかは
今はわからない。

時代はおそらく
二千年以上前。
原始的な民族と
僕は今対峙している。

「??△?◆!ΩΩ!」

石ヤリを向ける
原住民に、僕は

「No!No!No!」となぜか
英語で答え、手を上げる。

原住民たちは何か話し込み、
僕の手を縄でしばり、
村へと連れていく。

夜、広場にて長老らしき人と
いっぱいの村人に囲まれて、
拘束された僕は立っていた。

今でいう裁判のようなもの
かもしれない。

ここまで冷静に説明しているが、
しぬかもしれない状況に、
心臓はバクバクしていた。

変な服を着たよそ者。
このままでは下手したら
ころされる。
僕はどうしたらいいか
必死に考えた。

「はーるーよー、
 とおきはるよー♪」

口から出たのは「歌」だった。
僕の唯一のとりえだった。
ユーミンの春よ来いが
とっさに出たのは、
なんとなくだ。
強いて言うなら、平和っぽい?

ひと通り歌い終わった時、
広場には大歓声が。

歌という概念があるか
どうかもわからない時代で、
思った以上に成果があった
ようだ。

捨て鉢な作戦がうまくいった。

以降、僕は村の歌い手になった。
夜になると、宴の席で、
僕が歌うのが恒例になっていった。

歌の数には困らなかった。
流行りの歌、懐メロなど
僕は聞きこんでいたからだ。

僕はうれしかった。こんなに
人に必要とされたことは
今までなかった。
現代に戻れなくてもいい、
ここで生きていきたい。
そこまで思った。

やがて原住民の言葉も
わかるようになった。
この時代には時計が
ないので、正確には
わからないが、半年くらいは
経ったかもしれない。

そんな幸福な時に、

僕はいいことを思いついた。

自分の歌を作ろう。
現代の誰かが作った
歌じゃなく、僕自身の
オリジナルだ。

きっとみんなスゴイと
ほめてくれる。

僕は毎日人の来ない
森の中で、曲を作っていった。

そして、宴の夜。

僕は驚かせようと
誰にも言わずに僕の歌を
披露した。
心を込めて、歌った。

「待った!」
長老の声だ。歌がとぎれる。

「違う歌にしてくれないか?」

心が凍り付き、崩れる音がした。

僕は叫びながら逃げ出した。

そう、みんなが欲しかったのは
「僕」じゃない。
僕が好きな、ほかの誰かの
歌だった。「僕」の歌は、
だれも欲していなかった。

僕が感じた、生きがいとは
何だったのだろう。
初めて感じた、必要と
されているという気持ちは
なんだったんだろう。

キレイすぎる夜空の星を
見ながら、涙を流しながら、
僕は自分の存在意義を
考えていた。

    完

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