【短編小説4】秘剣、天虎・剣客浪漫

 
運命との決着。
 
 
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「その刀、天虎、
 渡してもらおうか。」

目の前にいる剣客。
名前はどうでもいい。
知る必要もない。

これでわかった。俺は
こいつに殺される。

俺の隣には歳のわりに小さい、
真水(まみ)という
女の子がいた。

真水は予言者だ。
その予言は100発100中。
必ず、当たる。絶対不可避。

だから、逆に無意味だった。
予言で危機が回避できるなら
誰もが欲しがる能力だが、
不可避の予言は
疎まれ、忌み嫌われ、
やがて故郷からも追われ、
今俺と旅をしている。

真水は10日前、言った。
「あなたは、10日後、
 命を落とします。」

いずれ死ぬとはわかっていても、
はっきり死期がわかるのは
嫌なものだ。

あとは、どう死ぬか、だ。

「何を呆けている。
 聞いているか?
 天虎を渡せ。」

秘剣・天虎。
確かに俺は持っている。
その刀は、おそらく
最強の刀だ。だが、
俺はそれを使ったことはない。
愛刀はそこらの鈍ら刀だ。

どうせ命尽きる身だ。
最後の余興を楽しむか。

「いいよ、この刀、
 くれてやる。
 真水、離れてろ。」

真水が離れたのを確認してから、
俺は天虎を剣客のほうへ
放り投げた。

「ほう、天虎を持つものは
 決して自ずから
 使わないとは聞いていたが
 あっさり渡すとはな。
 どんな秘剣だろうと、
 俺なら使いこなせる。」

俺と剣客は刀を向かい合わせる。

「逝くぞ!」

相手は素早く重い剣撃を
容赦なく俺にくらわせる。

「素晴らしい!天虎、
 素晴らしい刀だ!
 俺は最強の力を手に入れた!
 フワハハハハハハハ!!」

斬撃はしだいに俺を
追いつめていく。
血だらけになっていく
俺を、真水は
悲しそうに見つめている。

俺の鈍ら刀が宙に飛ぶ。
終わりだな。天虎が
俺の胸を突きさす。

「ふひゃひゃひゃひゃ!
 終わり終わり終わりィ!
 そして俺も終わりィ!」

剣客は、いや天虎は
自らの主の首をはねる。

秘剣、天虎は最強の刀だ。
卑剣、天虎は最凶の刀だ。

卑しいまでに血を欲し、
相手の血を吸い、
使い手の命も食らいつくす。

だから、俺はそれを一度も
使わなかった。相手が
束の間の万能感を得て、
絶望するのを見るために、
あえて天虎を渡した。
死ぬ運命は決まっても、
死に方は選べるらしい。

いつのまにか真水が
すぐ近くにいた。
神通力だろうか。
心に話しかけてくる。

「ごめんなさい。結局
 あなたの運命も
 変えられなかった。」

「俺にとってはどうでもいい。
 それより、お前がこれから
 どう生きるのか、心配だ。
 俺なしでも、生きられるか?」

「…死の間際に、私の心配。
 いつもそうだった。
 私にだけは、やさしい。
 生きますよ。私の予知が、
 私を殺すまで。」

「もう逝く時間のようだ。
 最後に一つ。俺との旅、
 楽しかったか?」

「…はい、とても」

運命のままに、俺は逝く。
最後が愛する人のそば。
悪くない、悪くない
逝き方だ。

顔に雨粒が落ちていく。

    完

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